仕抹に困る人--西郷南洲翁遺訓その1(愛国論その5)

命ちもいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は、仕抹に困るもの也。この仕抹に困る人ならでは、艱難を共にして国家の大業は成し得られぬなり。去れども、个様(かよう)の人は、凡俗の眼には見得られぬとぞ申さるるに付き、孟子に、「天下の広居に居り、天下の正位に立ち、天下の大道を行う。志を得れば民と之れに由り、志を得ざれば独り其の道を行う。富貴も淫すること能わず、貧餞も移すこと能わず、威武も屈すること能わず。」と云いしは、今仰せられし如きの人物にやと問しかば、いかにも其の通り、道に立ちたる人ならでは彼の気象は出ぬ也。


(財)庄内南洲会から「西郷南洲翁遺訓」を送付いただいた。文語体なので分かりにくい部分もあるが、62頁の小冊子は一読するといずれも納得することばかりである。

今回の東京都知事選の候補者の中で上の西郷さんの考えに近いのは、唯一元国連事務局長の明石さんだけだと思うが、どんなものだろうか。青島さんだってただ名誉が欲しいから知事になったように思えるのだが、もし青島さんにお眼にかかる機会があったら聞いてみたいね。 (1999.3.6記)