次郎長伝の筋(森の石松がらみ)

  1. 安政5年の11月か12月、遠州秋葉山神社の境内でばくち打ち同志の出入り(喧嘩)があり、そこで次郎長一家が何人かを殺し、次郎長、お蝶夫人(持病の癪で苦しんでいた)、森の石松の三人が旅(いわゆる長い草鞋)の途中尾張に来たとき、宿屋で次郎長が胴巻きを盗まれたのが、物語のそもそもの発端である。凶状持ちの次郎長は盗難をお上に届けることができない。
  2. 運悪くもお蝶の病気が悪くなるが金はない。昔世話をしたことがある小川の勝五郎に世話になるが、勝五郎は貧乏でお蝶を医者に見せられない。やはり次郎長が昔世話をしたことがある保下田の久六にまとまった金を借りにいったところ、けんもほろろに断わられる。この保下田の久六というのが悪役で、桜堤の悪代官竹垣三郎兵衛と親戚なので二人で悪いことをしている。このことが前半の主題となる。
  3. 保下田の久六に金を借りにいった帰り道、石松が勝五郎に尾張の人の悪口を大声で言っていたところ、深見村の長兵衛という親分に聞き咎められ、訳を話すと長兵衛さんが自分の家に次郎長主従と勝五郎を引き取ってくれ、立派な医者に見せたが、その甲斐もなく大晦日にお蝶は亡くなる。
  4. お蝶の葬儀は、翌1月21日に行われたが次郎長の貫禄で香典が3112両2分集まった。この香典の額は莫大だというだけで特に意味はない。博打打ちの親分ばかりの通夜の席で、保下田の久六が来ないことが話題になり、石松と次郎長が久六の悪事を皆の前で話す。運が悪いことにその時縁の下に久六の子分が潜んでいて、それを久六に話す。
  5. それを聞いた久六は逆恨みをし、早速代官に次郎長の逮捕を依頼する。
  6. 代官所から長兵衛の家に次郎長を逮捕しに来るが、長兵衛の機転で次郎長と石松を逃がす。小さい息子も連れて行ってもらう。
  7. 次郎長の身代わりとして長兵衛夫婦は代官所へ連行される。女房のお縫はすぐ返されるが、長兵衛は水牢に入れられ20日後水死する。
  8. 1〜2ヶ月して、次郎長は代官竹垣三郎兵衛と保下田久六を夜襲して殺す(桜堤の仇討ち)。この夜襲の参加者は次の通り。
    次郎長、大政、小政、大瀬半五郎、法印大五郎、増川仙右衛門、奇妙院常五郎、尾張の大野の鶴吉、それに森の石松。
  9. その後まだ色々面白い話もあるが省略して、7年後(7回忌の年であるから6年後の筈であるが7年後ということになっている。)次郎長が森の石松を讃岐の金毘羅様へお礼参りの代参に出す。というのは前項の夜襲の前、金毘羅様に仇討ち成就の願をかけに行っていたのである。
  10. 代参を無事済ませた石松は、帰路大阪から伏見まで淀川を上る三十石船に乗る。ここで江戸っ子と酒飲みねえ、寿司食いねえ、とやりあう場面は最も有名なところであろう。
  11. 伏見へ降りた石松はお山お参り・京都見物の後、草津追分の身受山鎌太郎のところへ世話になる。この親分は28歳と若いが、売り出し中で大変世間の評判が良い。鎌太郎から100両という大金を、お蝶の7回忌の香典にと預かる。
  12. 清水へ帰る途中浜松の中野町で、ばったり都鳥三兄弟に会う。このとき馬鹿な石松は身受山鎌太郎から100両の香典を預かったことをペロッとしゃべってしまう。これを聞いた都鳥は自分達のところで遊んでいくよう石松を家に連れて行く。
  13. この都鳥三兄弟が後半の悪役で、石松から100両を騙して借りる。約束の期限を3日過ぎても返さない。返す気がない三兄弟は子分の四天王と7人で、石松をこれから金をもらう当てがあると称して夜同行させ、用水堀で石松を騙し打ちにする。用水掘の近くに保下田久六の元子分3人を潜ませておき、その3人に「親分の仇討ち」と名乗らせ、石松がその3人とわたりあっているとき、助太刀と称して石松を7人で後ろから襲ったのである。
  14. しかし石松は強く、相当切られていたのだが逃げて、幼なじみの兄貴分小松村七五郎の家にかくまってもらう。都鳥一行は追いかけてくるが、七五郎の女房お民が度胸あるたんかを切り追い返す。
  15. 傷の応急手当をした後、七五郎夫婦が止めるのも聞かずまた用水掘りへ石松は行き、そこへ戻ってきた10人に切られて死ぬ。この時の10人は次の通り
    都鳥吉兵衛・梅吉・常吉の三兄弟、伊賀蔵・万作・重太郎・音松の四天王、保下田久六の元子分3人。
  16. 翌朝小松七五郎は石松の死を知り、清水へ行き次郎長に話すとともに、そのまま石松の代わりとして次郎長の子分になる。
  17. 何ヶ月後か何年後か分からないが、次郎長がふぐを食べて虫の息であるという噂が都鳥一家がある都田村(浜松周辺)に伝わった。本当は次郎長の子分がふぐで何人か死んだだけで、次郎長も主な子分も皆元気であった。
  18. 噂を聞いて喜んだ都鳥は次郎長に夜襲をかけるべく清水の近くの追分に来る。次郎長がいると何時仕返しをされるか分からないからである。石松を殺した10人にもう一人本座村の為五郎という悪党が加わって11人である。追分へは夕方着いたが、切り込みをする夜更けには間があるので、青木屋という旅館で休み夕食を摂る。
  19. ところが青木屋に追分三五郎という次郎長の子分がたまたまいて、11人のことを察知し急遽次郎長に注進する。
  20. 次郎長は、同数の11人で青木屋へ行き、11人を殺して石松の仇討ちをする。その11人とは、
    次郎長、小松七五郎、大政、小政、大瀬半五郎、法印大五郎、増川仙右衛門、尾張の大野の鶴吉、尾張の桶屋の吉五郎、鳥羽熊、追分三五郎。

テープを持っていますので、ご興味のある方にはお貸ししてもいいですよ。