鶴田氏の「小峰 君の思い出」


小峰君は、柔道が強くて、入学してまもなく初段の黒帯になったと思う。それで長いこと腰を痛めたりもしていた。その一見ごつい彼が、繊細な心を見せる時があり、それが魅力的だった。イタリア語を勉強して、ダンテの神曲を原語で読みたいと彼が言うのを聞いて、英語で苦労していた私は、絶句したことがあった。クラスの活動にも、静かな雰囲気で、よく参加していたとおもう。

二年の時だったとおもうが、ホームルームの幹事役が小峰君に回った日があって、テーマに困ったのか、恥ずかしそうに「お化けは実在するか」というテーマを出したことがあった。ところがこれが大当たりで、皆真剣になり、いろいろと体験談や聞いた話が飛び出して、とても面白いホームルームになった。安積君が霊媒をつかった心霊現象の会に出た話をしたり、僕がエクトプラズムの話をしたりしたっけ。普段科学的な雰囲気で学校生活をしていたのに、急にそれを超えた話にクラスがのめりこんだのが意外でもあって、印象に残るホームルームだった。

就職後一度クラス会で会って、農学部と商社がどう結びつくのか聞いたところ、木材を評価して買い付け、お客に売りつける、となにか恥ずかしそうな口振りで、言っていた。彼の口からでた、売りつけるという言葉が、彼のナイーブな人柄とミスマッチな感じがして、本人もそれを意識していたような感じがした。

それが、最後の機会になってしまった。


鶴田 徹
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